狐の社・二社目

カードゲーム好き元限界労働者がその時々に好き勝手ゲームについて語るブログ。

銀枠解禁について思うこと。

2017年12月1日、統率者(EDH)界隈において衝撃的な発表があった。
端的に言ってしまうと
「Unstable発売記念に、今から一ヶ月半の間だけ銀枠のカードの使用を許可します」
というものだ。

 

銀枠カードとはつまりジョークカードであり、通常の白枠黒枠のマジックのカードと一緒にプレイすることが想定されていないカード群だ。(Unstableだけは違うだろうが、少なくともUnglued、Unhinged時点では想定されていなかったはずだ)

勿論「へぇ~そうなんだ。それは良かったね」で済む話ではない。銀枠シリーズが使用可能になることで様々な、本当に様々な影響が界隈全体に及ぶのだ。

 

普通に考えると、一気にカードプールが増えたことで新しい構築を模索する楽しみが生まれ、かつ愉快なジョークカードが顔を出す事によってEDHの卓に自然と新鮮味と笑顔がもたらされるだろう。
…と考えるものだが、ところがどっこいそうは行かない。

 

EDH本家側もそう考えてこういった告知を出したに違いないのだが、
我々は面倒なオタクなのでそれを素直に喜ぶことができないのである。
事実として筆者の観測範囲内で銀枠解禁を素直に賞賛しているプレイヤーは少なかった。
あくまで観測範囲内の話なので偏りはあるだろうが、それにしても少なかった。

 

何故彼ら(と筆者)は銀枠のカード達を素直に受け入れる事ができなかったのだろうか。

その理由は大まかにカテゴライズすると「環境が破壊される」「銀枠のノリを持ち込んでほしくない」の二種類だ。

後者は個人の感覚に依存した話になってしまうので、今回は前者について話していこうと思う。

 

環境が破壊される危険性がある。

ユーザーがそう考えるのはもっともな話だ。しかし、本家側も我々EDHユーザーと同じような危惧を抱いたのだろう。
一ヶ月半だけのお祭りとはいえもちろん環境がめちゃくちゃにされるのは望むところではないのである。


重ねて言うが一ヶ月半だけのお祭りな上にそもそもがカジュアルフォーマットだ。
ユーザー間で勝手に調整しとけよと投げる手もあっただろう。
しかし、言い出しっぺとしての責任があるのか、最低限のバランスは取ろうとしているらしく、今回の銀枠騒動では親切な事に本家側が禁止カードを制定してくれている。

 

銀枠禁止カードリスト


Ashnod’s Coupon
Double Cross
Double Deal
Double Dip
Double Play
Double Take
Enter the Dungeon
Magical Hacker
Mox Lotus
Once More With Feeling
R&Ds Secret Lair
Richard Garfield
Staying Power
Time Machine

 

本家が制定したこれらの禁止カードは禁止理由が一貫している。

 


「次のゲームに影響を及ぼすカード」(Double系、Time Machine)

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▲どれも次のゲームの開始時に何かをするというカードだが、面倒事しか起こさない上に弱い。いっそ禁止にしても誰も文句は言わないだろうという判断だろうか

 


「組み合わせるとヤバいカード」(Mox Lotus、Magical Hacker、Staying Power)

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▲通常のカードと組み合わせるとすぐにゲームが終わるカードたち。エムラクールも許されなかったのにMox Lotusなんて許されると思うか?他2枚も様々な組み合わせで無限や危険な状況が発生するため、これも禁止もやむなしといった所だろう。

 


「ゲーム性を破壊するカード」(Once more with feeling、Richard Gurfield)

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▲生命の律動や激動や世界火など、ライフ40でグダグダやるコンセプトを1枚で覆すような過剰なリセット・ライフ増減は許されないらしく、Once more with feelingもそのあおりを受けたようだ。メンタルマジックを始めるカードなんぞも許されるわけがない。

 


「銀枠とはいえやり過ぎなカード」(Ashnod's Cupon、Enter the Dungeon、R&D Secret Lair)

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 ▲すっかり有名になった「対戦相手にジュースを買いにいかせるカード」は面倒事しか起きないのが目に見えている。テーブルの下でサブゲームをするカードは自分の家では好きにすれば良いが、カードショップでそれをやるのか?無いでしょ。

 

 

といったように通常の禁止基準に基づいてこれだけのカードが本家によって禁止されている。これならば環境が破壊されたりおかしなことが起きるわけもなく、みんなが安心して銀枠カードを使った愉快なゲームを楽しめるというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

勘の良いプレイヤー、あるいは銀枠カードに対して一定の知識を持ったプレイヤーがこれを読んでいるならば、勿論こんな程度の禁止であらゆる面倒事、一般的なマジックから離れた行為、環境の破壊が抑制できるわけがないと理解できている筈だ。

 

禁止がいくらか出たところで、所謂“ガチ”な構築で検討されるレベルのカードもまだそれなりにある。その代表的な例がJack-in-the-Moxだ。

 

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0マナで設置し、起動時にダイスを振る。振ったダイスの目が1ならば壊れて墓地に行ってしまうが、2、3、4、5、6だった場合はそれに対応した有色マナが出てくるという、いわば「1/6の確率で壊れるモックス」だ。

 

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本家Moxはあまりにも強すぎるために当然ながらEDHでは禁止されているが、モックス・ダイヤモンド、金属モックス、オパールのモックスといった彼らの子孫は今もEDHの基本的なマナ加速として様々なデッキのマナベースを支えている。一度使えば壊れてしまう水蓮の花びらすらも喜んで使われるほど、彼らはマナ加速に飢えている。

 

数年ぶりのアーティファクトセット「カラデシュ」で遂に新しいモックスが来るのではないか!?と期待していたEDH勢が多かった事を考えれば、0マナのマナ加速の種類が増えるということがどれだけEDHに影響を与えるか理解できるはずだ。

 

Jack-in-the-Moxは一例であり、他にも有用そうなカードは数多くある。

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ギャンブルに次ぐ赤の貴重なサーチカード。追加のDemonic Consultation。トップのカードを当てる事ができれば1マナ3ドローのAncestral Recallになるカード(黒や青の教示者と組み合わせれば有効に使えるだろう)。数字を増減させるカード。foilカードのコストを軽減するカードetc…

 

これらのカードが刷られた当時、銀枠カードは通常のカードと組み合わせて使う事を前提に作られてはいなかった。だからこそ、たった今、唐突に彼らが白黒枠の世界に流入してきたことによってEDHの世界が壊れてしまうのではないかという不安が界隈を覆っているというわけだ。

 

さて、ここまでの記事で意図的に話題にしていなかったカードが1枚だけ存在する。

その1枚のカードが、もし、本家の提示した禁止リストに入っていたとしたら。

Mox Lotusのような“壊れた”カードと共に、“これは壊れたカードであり、使用を許可すべきでない”としっかりと認識され、リスト化されていたならば、今回の騒動はもう少し静かなものになっていただろう。

 

先ほど、EDHプレイヤーは0マナのマナ加速を喉から手が出るほどに欲しがっているという旨の話をしたわけだが、このカードはまさにその条件に合致している。

それも、EDH最高峰のマナ加速であるMana Cryptと肩を並べるほどに強い1枚だ。

 

その名も《Blacker Lotus》

史上最強、起源にして頂点たるマナアーティファクト、《Black Lotus》の名を継ぐものにして、その能力を一切の遜色なく、いやむしろそれ以上の能力を行使できる一枚である。

 

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Blacker Lotus (0)
アーティファクト

(T):Blacker Lotusをバラバラにちぎる。あなたのマナ・プールに、好きな色1色のマナ4点を加える。その後それらの破片を追放する。

 

まぁ。そういうわけである。

ランドセット、Blacker Lotus、むかつき。

ただこれだけでゲームは終わる。あまりにもあっけなくゲームが終わる。

虚空から1マナを出す水蓮の花びらが普遍的に使われている現状で、虚空から4マナを出すBlacker Lotusは人類にとってあまりにも早すぎる一枚となっている。

 

嘘か真か、その昔、銀枠が使用できる非公認大会でこのカードを大量にかき集め、プレイの度に本当に破いていたプレイヤーがいたという話があるが、それがEDH世界で展開されると思うと吐き気を催さずにはいられないプレイヤーもいるだろう。

 

少なくない出費と共に強力なカードを購入して勝つ。

それ自体は罪ではない。なんの問題もない。そもそもカードゲームは金のかかるゲームだ。より多く金を払いベストを尽くしたものがより強力なデッキを組めるというのは当然である。

だが、論点はそんな場所にはない。金銭的なものを問題にしているわけではないのだ。

 

 

Blacker Lotusの「バラバラにちぎる」という一文はあまりにも異端すぎる。絶版カードを破るという行為そのものに嫌悪感を抱く人間が少なくない中で、「デッキに入れて引いて破れば勝てる」というジレンマを生じさせてしまうのはゲーム的にも感覚的にも疑問を感じざるを得ない。

そもそもちぎるちぎらない以前にBlacker Lotusを引いたか引かないかだけで4マナ分も差が出る点にEDHというゲームがぶっ壊れると文句を言っているわけだ。

 

「所詮はカジュアルフォーマットなわけだからそちらのコミュニティ内で使わないよう決めたら?そうでないなら破らなくてもマナ出せるようにすればいいじゃない。使い回しできないようにすれば一緒でしょ?」

 

と考える賢明な諸兄らもいるかもしれない。だが、違うのだ。

 

今まで日本のEDHプレイヤーの多くは律義に本家の禁止リストに基づいてプレイをしてきた。パワー9はTimetwisterしか使わないし、森林の始原体が禁止されればそれを喜び、原始のタイタンやクルフィックスの預言者の禁止に首を傾げ、むかつきを早く禁止しろ、パラドックス装置を早く禁止しろ、シェリドンは何をしているんだと愚痴を言いながら暮らしてきた。

 

例えカジュアルフォーマットだとしても、本家大本は絶対であり、彼らのもたらす秩序とルールを守ってEDHというフォーマットを楽しんできたのだ。

 

その本家が「一ヶ月半銀枠を使っていいよ!」と告知し、Blacker Lotusを見逃すような雑な禁止リストを出した事に今回の騒動の発端はあるのではないかと思っている。

いや、間違いなくそうである筈だ。

 

世界のEDHプレイヤーはこの告知を受け入れ銀枠を使ってEDHを楽しむのか。

それともまるでそんな告知など無かったかのように振る舞い、今までと同じようなEDHを楽しむのか。

それはコミュニティ次第ではあるのだが、筆者は正直なところ「要らない告知をしたもんだな」と思っていたりする。

この告知によってEDH界隈はどのように動いていくのか、要注目といった所だろう。

 

 

このような批判的な記事をご覧いただきありがとうございました。