狐の社・二社目

カードゲーム好き元限界労働者がその時々に好き勝手ゲームについて語るブログ。

カードの値段と再録の話

近頃、MTG界隈でカードの値段についての話をよく聞くようになった。

いや、話しているかどうかも微妙なところかもしれない。皆が一方的に自分の哲学と理論をぶつけているというか、もっと端的に言えば「荒れていた」というか。少なくとも自分にはそう見えた。

その荒れの素は明白だ。MTGの新エキスパンション、「ドミナリア」に収録された神話レア《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》である。

 

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この「カーン」だが、モダンやレガシーでも使用されており、色を選ばない汎用性からスタンダードの様々なデッキのメインやサイドに投入されている。高い需要と神話レア故の供給不足が重なり、その値段は平均7000円を越え8000円に届く勢いである。この値段は現行で刷られているカード単品としては最高額となっている。

 

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…と、まぁこんな感じの有様なので、色々な主張が出てくるわけである。

カーンが高いと思っているプレイヤーは「高すぎる!」と喚くし、カーンを既に買っているプレイヤーは「高くなる前に買わなかった方が悪い!」とせせら笑うし、カーンをこの値段で買ったプレイヤーは「高くても本当に欲しければ買えるはずだ!」と主張をぶつけるわけだ。

荒れる話題にありがちではあるが、こういった主張は全て正しいと言っていい。答えが無いからこそ荒れるのだ。

 

「高すぎる!」

確かに高い。新作のゲームソフトを買ってお釣りがくる値段だ。こんなものを7000円払って買うのはいくらなんでも金銭感覚が麻痺しているだろうと筆者も思う。紙1枚だぞ紙1枚。

 

「高くなる前に買わなかった方が悪い!」

なるほど、正しい事を言っている。使う予定があるならば初動で抑えておくべきだろう。結局のところ、もし使われなかったら値下がりするかもしれない(=損するかもしれない)という甘い考えでお金を出し渋ったのが問題なのだ。買わなかったサイドにも落ち度はあると筆者も思う。

 

「高くても本当に欲しければ買えるはずだ!」

まったくその通りだ。どれだけ値段が高くても、MTGの大会で勝つことを至上目的とするガチなプレイヤーなら買えるはずだ。筆者も断腸の思いで1枚7000円払って《沸騰する小湖/Scalding Tarn》を4枚買った。高いから買わないというのは結局のところ必要でないという事なのだ。本当に欲しければお金を払える筈だ。

 

というように様々な主張にそれぞれの理論と哲学と主張が詰まっているので一概にどれが狂っていてどれが正しいとは言えない。MTGに対するスタンスも金銭感覚も様々なのだ。

 

それと並行した話ではあるが、MTGプレイヤーは高額カードに対する感覚がかなり緩めの傾向にあると筆者は感じている。プレイヤー層に社会人が多いことはその一因だろう。払えるお金をそもそも持っていない学生と違って、社会人はその気になりさえすれば7000円のカーンだろうが50000円の《Underground Sea》だろうが買う事ができる。

だからこそ「カーン7000円は高い」という意識が共有されていながらもそれを買うか買わないかで荒れるのだ。「7000円は高い。バカバカしい。こんなゲーム辞めたるわ」ではなく、多くのプレイヤーが「7000円は高い。買うか買わないか迷うな」という段階まではついて来ているのだ。

 

つい最近、HEXTCGが約2500円の構築済みデッキに約3000円のカードと1000円のカードを3枚ずつ投入するという暴挙に出たことでちょっとした話題になったのだが、これはMTGでは絶対にできないアプローチだと筆者は思っている。

 

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▲3000円(左)、1000円(右)

 

3000円と1000円のカードを3枚ずつ。ここまでで12000円。更に優良コモンアンコモンも必要分4枚入っていたりする。サイドボードこそ無いが、値段的に見てこれはただ事ではないし、少なくとも2500円の構築済みに入れていい内容でもない。

 

さて、この構築済みデッキの発売は勿論消費者としては万々歳なのだが、シングルカードを売る業者や、既に12000円払ってカードを揃えたプレイヤーはそれをどう思うか、という話になる。

《Shamrock, The Goldfather》は一晩で3000円から500円まで暴落してしまったし、同レベルの構築済みを更に2種類同時に出しているので別の高額カードもこの勢いで値下がりしている。業者にとって大打撃なのは勿論のこと、構築済みの内容が発表される直前にShamrockとPathfinderを揃えたプレイヤーがいたとしたら、その人は最悪な気分になっていることだろう。

 

タイムリーな上にあまりに極端な例だったのでHEXの名を出したが、遊戯王やデュエルマスターズのような低年齢層をターゲットにしたTCGもそれなりの頻度での再録を行っている。なぜMTGがこんなにも高額で、こんなにも再録を渋るのかと言えばターゲットの年齢層が高いからという点に尽きる。

 

最近発売したチャレンジャーデッキに《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》と《熱烈の神ハゾレト/Hazoret the Fervent》が入っていて、良心的だという話も出た。しかし、逆に言ってしまえばWotCはその程度の事しかできないのだ。

 

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昔、筆者は「アメリカは訴訟大国だからあんまりショップをいじめるような再録はできないんだよ」と聞かされたことがある。それもそうなのだろうが、果たしてショップだけの問題なのか。もしかしたら最初はそういった理屈だったのかもしれないが、プレイヤーがそれを受け入れてしまった事が大きいのではないか。

 

勿論、どっちが良いか、正しいかという話ではない。

もう一度言うが、こういう話に正解はない。荒れる話題にはありがちだ。

高額カードをどんどん構築済みや特殊エキスパンションで再録して価格を下げて欲しいというユーザーもいれば、持っているカードの価値をむやみに下げるような真似をしてほしくないというユーザーもいる。どちらも理解できる主張だ。

 

どんなユーザーもできる事ならカードを安く買いたいと思っているし、どんな業者もできるだけカードを高く売って利益を出したいと思っている。両者の中間くらい、「このくらいの値段なら買うやつもそれなりにいるだろう」程度の値段をつけてカードは売られるものだ。

 

WotCもその気になればユーザーの事だけを考えて構築済みに「カーン」を2枚3枚入れることもできるかもしれない。だが、現実的にはあまりにMTGを売って生活している業者が増えすぎてしまったし、自分たちの商品を売って生活している彼らを蔑ろにし過ぎる事もできない。長い歴史の中で年齢層も引きあがり、「絶対に買えない」ではなくて、「買うか買うまいか」で悩む程度の財力があるプレイヤーも多い。先ほど言ったように、プレイヤーがその値段を受け入れているのだ。

だからカーンはきっと後の構築済みに入る事は無いし、こんなにも高い。

 

なんでカーンが7000円もするの?と言えばそれが答えだ。

プレイヤーの金銭感覚が7000円を許容している。そしてカーンが供給過多に陥るような大事件は今後も起きることはないと予想できる。

故に、環境が大きく変化してカーンの採用率が落ち込むかスタン落ちが近づくまでは現在と同じくらいか近い価格は維持し続ける筈だ。

 

あなたがカーンを買って何に使いたいかは筆者は知らない。ビークルデッキを組むのかもしれないし、ミッドレンジのメインやサイドに何枚か挿すのかもしれない。下の環境の親和やプリズンで使うのかもしれない。

何にせよ、使いたいなら諦めて買っちゃいなよ。

無責任かもしれないけれど、筆者はそう思います。

 

 

ご覧いただき、ありがとうございました。